約 4,131,762 件
https://w.atwiki.jp/tanosiiorika/pages/3503.html
未来の希望龍 ラスト・ワールド・ラゴン VR 虹文明 コスト8 マナ0 クリーチャー:ワールド・コマンド・ドラゴン/クリエイター/マスター革命軍/ゼニス 16500 ■マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。 ■このクリーチャーは、コストを支払って召喚できない。 ■G・ゼロ-バトルゾーンに能力に『革命』を持つドラゴンが3体以上と自分の場にフィールドがあれば、このクリーチャーをコストを支払わずに召喚してもよい。 ■革命0トリガー―クリーチャーが自分を攻撃する時、自分のシールドが1枚もなければ、このクリーチャーをコストを支払わずに召喚してもよい。 ■革命チェンジ―コスト7以上のドラゴン ■T・ブレイカー ■このクリーチャーを召喚してバトルゾーンに出したとき、山札から3枚まで選び、マナゾーンに置く。その後、山札をシャッフルする。そして、相手の手札を見て、好きな数選び捨てる。 ■自分のターンの始めに、ドローするかわりに、山札からカードを一枚選び、手札に加え、その後山札をシャッフルする。 ■このクリーチャーがアタックする時、相手のバトルゾーン、マナゾーン、手札から二枚選び、山札に加え、シャッフルする。そしてその後、自分が負けるか中止するまでガチンコ・ジャッジをする。こうして、ガチンコ・ジャッジで勝った回数山札、シールドゾーン以外の場からドラゴンをバトルゾーンに召喚する。 ■自分の他のドラゴンがバトルゾーンに出たとき、自分の山札の上から1枚目を、裏向きのまま自分のシールドに加えてもよい。その後、自分の手札を1枚、裏向きのまま、新しいシールドとして自分のシールドゾーンに置いてもよい。 ■自分のドラゴンすべてに「スピードアタッカー」と「エスケープ」と「ブロッカー」と「スレイヤー」と「エターナルΩ」を与える。 ■相手の呪文の効果またはクリーチャーの能力によって、自分のクリーチャーがタップした時、自分のクリーチャーとマナゾーンをすべてアンタップする。 ■自分のフィールドがバトルゾーンに出た時、相手のクリーチャーを好きな数タップし、相手のシールドを2枚選び、選んだシールドを墓地へ置く。 ■革命0-このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、次の次の自分のターンまで、自分はゲームに負けず、相手はゲームに勝てず、このクリーチャーよりパワーが小さいクリーチャーをバトルゾーンに出せず、フィールドを展開できない。そして、バトルゾーンから離れるとき、離れずにバトルゾーンにとどまる。 「革命龍の歴史を俺が継いでみせる!」-未来の希望龍 ラスト・ワールド・ラゴン 作者:まったり
https://w.atwiki.jp/niconicojikyouplay/pages/40.html
【ゲーム】ザ・グレイトバトル2 ラストファイターツイン(SFC) 【作者名】加藤、ヤス 【完成度】完結 (07/12/20~08/02/20) 【動画数】7 【part1へのリンク】 【マイリストへのリンク】http //www.nicovideo.jp/mylist/5146614 【備考】 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/hshorizonl/pages/586.html
――いつからだったのかな 憧れてたその場所 叶えて たどり着きたい その未来 ◆◆ 何が起きた。 何故、此処にいる? そもそもこいつは"何"だ。 星野アイ? いや違う。 櫻木真乃から聞いたアイは、間違っても歌声一つで破壊力を生み出すような怪物ではなかった筈だ。 ならば、これは一体――渦巻く疑問にはキリがない。 だからこそ、メロウリンク・アリティがそれら疑問を全て後回しにし、目の前の敵への対処のみを考え行動したのは賢明だった。 「ッ、ぐ、ォ――」 至近距離で炸裂した『アイ』の歌声は、メロウリンクの全身を容赦なく蹂躙した。 メロウリンクは異能生存体、因果律さえ超越した運命の近似値だ。 コンマ1%の可能性をものにする男。致命傷を避けながら生き延びる、天性の才能。 当然今、彼が直面しているこの状況は、"近似値"の発動条件を満たしていたが―― 何分此処には逃げ場がない。 破壊的音量で放たれる物理的破壊力を伴った歌声は、均一な死で満たされている。 近似値は所詮近似値。本家本元の異能生存体ならばいざ知らず、彼にはこれを凌げない。 幸運は降り注がず、音はメロウリンクの骨を砕き、肉を拉げさせ、その身体をゴミのように吹き飛ばした。 「――づ、ッ!」 だがそこはメロウリンク・アリティ。 間近で爆撃が炸裂するなど日常茶飯事の炎臭い戦場を生き抜いた傭兵である。 肉の中で骨が茨のように咲き乱れる激痛を堪えながら、彼は『アイ』に対し即座に対応した。 「わ」 投擲したのはいわゆる圧力鍋爆弾。 圧力鍋の内側に爆発物と雷管を仕込んだ、テロリスト御用達の廉価兵器だ。 本来であれば携帯電話やキッチンタイマーを起爆装置に用いるのが定番だが、メロウリンクはこれを既に改造し終えている。 圧力鍋爆弾とは名ばかりの実質的な手榴弾と化させ携帯していたそれが、今此処で活きた。 偶像の顔の直前に投擲された爆弾。 サーヴァントであれば通じすらしなかったろう攻撃だが、しかし『アイ』は魔力の塊という点では同じでも広義のサーヴァントとは異なる。 従って威力さえ足りていれば、問題なく爆薬による破壊は彼女の身体に通るわけだ。 ……もっとも、それは。 「いったあ……。酷いなあ、アイドルの顔にこんなもの投げ付けるなんて」 当たればの話であるし、本当に威力が足りているならばの話だが。 『アイ』は起爆寸前の圧力鍋爆弾を片手でひょいと払い除けた。 その後爆弾は起爆し、破片と爆炎を撒き散らしたが、それは『アイ』にしてみれば多少痛い程度のダメージでしかなく。 舌打ち混じりに後続を用意しようとしたメロウリンクの動きを遮るように、その声帯が破局を紡いだ。 「――瞳のIllumination 輝く無限の可能性――」 炸裂する輝きの星(イルミネーションスター)。 その威力はもはや、波状に引き伸ばした破城槌といって相違ない。 幸いだったのは、彼女の矛先がサーヴァントであるメロウリンク単体に向いていることだろう。 もしも無力な少女である田中摩美々がこの距離でこの歌を聴いた/喰らったなら、文字通り命に関わる。 両手が動くことを確認したメロウリンクの"近似値"が働く。 咄嗟に逸らした首の動きが、『アイ』の踊り舞うような蹴撃をどうにか躱させた。 「避けるんだ。すごいね」 追撃――避ける。 ――避ける。避ける。 掠めるだけに留めて、生を繋いでいく。 光景だけを見れば、メロウリンクが技術で『アイ』を圧倒しているようにも見えるだろう。 だが現実としては、彼はただ命からがら避け続けているだけだ。 言うなればそれは、猛禽がすばしっこい小動物を時間をかけていたぶり遊んでいるようなもの。 生を繋ぐことが、活路の有無と一致していない。 気まぐれで生かされているだけでしかないのだと、メロウリンクは心底理解しながら唇を噛んでいた。 「――私たちのキ・セ・キ 繋がってく――」 眼圧が上昇し、内臓が潰れてメロウリンクは血を吐きながら吹き飛んだ。 目から溢れ出すのは血涙だ。 巨大な衝撃を受けたことにより、耐えきれず眼球そのものが悲鳴をあげているのだ。 息を吐くだけで、全身のあらゆる場所が痛む。傭兵として血に塗れた日でさえ、此処までの苦痛があったかどうか定かでない。 しかし吹き飛ばしてくれたのは、実のところメロウリンクにとって僥倖だった。 痛みこそすれど、まだなんとか自由の利く両腕で瞬時に対ATライフルを構え――発砲する。 「効かないっての」 そう言って片手で払い除けようとする、『アイ』。 だがしかし、先ほどの圧力鍋爆弾のようにはいかなかった。 払うこと自体には成功したものの、その右手からは確かに血が滴っている。 驚いた顔で傷口を見つめ、「……わお」と呟く『アイ』の様子は、それが彼女にとって予想外の負傷であることを証明していた。 (……助かる。お前まで駄目なら、いよいよ打つ手が見つからないところだった) 先ほど用いた圧力鍋爆弾は、あくまでもこの世界のあり物を使って造った即席兵器に過ぎない。 だがその点、この対ATライフルは違う。 これは英霊の座からはるばるこの地にやってきたメロウリンクが長らく相棒としてきた、孤独な機甲猟兵達の愛銃だ。 そこに宿る神秘は、薄いとはいえ当然ながら現地調達品などとは格が違う。 このライフルでの射撃ならば、さしもの『アイ』も当たって無傷とはいかないらしい。 「びっくりしちゃった。やっぱり腐ってもサーヴァントだね、馬鹿にしたら痛い目見ちゃうか」 「……口は災いの元だ。薄々そうだろうと思ってはいたが、やはりサーヴァントではないんだな」 「ん? そうだよ。別に隠してもないし、あそこでぐったりしてる摩美々ちゃんなら見ただけで分かるんじゃないかな」 そう言って『アイ』が示した先では、摩美々が片腕を抑えながら息を切らしてメロウリンク達の方を見つめていた。 先の一撃(ワンフレーズ)は決して彼女だけを狙ったものではなかったが、それでも人間の身で浴びるには強烈すぎたのだろう。 抑えている右腕は明らかに折れていて、全身に受けているダメージも遠目でも分かるほど大きいようだった。 ――まずい。改めて、メロウリンクは焦燥に歯噛みした。 (継戦の心得はある。俺だけなら、まだある程度持ち堪えられる) もしも仮に、今此処に立っているのがいつかの"鋼翼"だったなら。 そしてプロデューサーのサーヴァント、"拳鬼"だったなら。 メロウリンクは恐らく抵抗の余地などなく、芥虫を踏み潰すように抹殺されていたことだろう。 しかしその点、この『アイ』は彼らほど洗練された存在ではないように見えた。 強力ではあるが、それだけ。鋭く研ぎ澄まされたものがないため、やろうと思えばそれなりに戦いを引き伸ばせる公算があった。 だがそれは、あくまでもメロウリンク一人だけだったならば、の話。 彼にとって成すべきことが自己の生存だけだったならば、の話だ。 ――今の彼には、二つの"成すべきこと"がある。 そこに、メロウリンク・アリティという一個人の生存は必ずしも含まれない。 マスター・田中摩美々の守護。安否不明の七草にちかの安全確保。 これら二つこそが、傭兵ではなくサーヴァントとしてこの場にいるメロウリンクの最重要任務だ。 そしてその場合、この"偶像"を相手取りながら成し遂げる難易度は……破格なんて次元ではなかった。 「……何故、マスター達を先に狙わない?」 「え?」 「俺を嬲り殺しにするよりも、その方がずっと手早い筈だ。それが分からないほどの馬鹿には見えない」 「あはは、敵にそれ聞いちゃうんだ。いいよ、教えてあげる。それはね」 不可解なのはそこだ。 『アイ』は今、明らかにメロウリンクを意図して狙っているように見える。 効率と合理性だけを見るならば、狙うべきは彼でなくマスターである摩美々達なのは明らかだ。 実際、メロウリンクにとってもそうされるのは最悪の展開。 なのに『アイ』はそれをしていない。その理由は何かと問うたメロウリンクに、『アイ』は笑って答える。 「うんと絶望してほしいんだって」 「……、……何?」 「あなた達、死柄木くんに楯突いたでしょ。 箱舟……だっけ。そんなやばめな計画まで建ててさ、死柄木くんとあの子の"連合"の邪魔してきたじゃん? ずっと」 『アイ』は確かにメロウリンクの見立て通り、未熟な存在だ。 強さはある。ただ、年季はない。 言うなれば生まれたての戦闘者であり、付け入る隙があるとするならきっとそこだ。 しかし、かと言って聖杯戦争のセオリーも分からないほどの馬鹿ではない。 田中摩美々を狙うのが最善だなんて、そんなことは彼女だって当然分かっているのだ。 なのにそれをしない理由。それは、そういう指示が下りているから。 彼女を此処に投入した、小さな小さな運命の砂粒であり――あるちっぽけな"悪"の、意思だ。 「だから、絶望してほしいんだってさ」 "彼"は、連合を愛している。 そして死柄木弔という魔王を、崇拝している。 きっと、誰よりもだ。 世界を白く塗り潰すあの"崩壊"を、彼は誰よりも奉じ焦がれている。 そんな彼にとって箱舟とは、そしてそこにいるアイドル達とは目障りで憎たらしい邪魔者以外の何者でもなかった。 魔王の未来に立ち塞がる邪魔者達。 忌まわしく鬱陶しい、ガキども。 ただ殺すだけじゃ飽き足りない、どうせ殺すのなら―― 「死柄木くんの邪魔をしたアイドル達が、うんと絶望して苦しんで、泣きじゃくりながら死ぬようにしろって。そう言われたの」 ――その"死"は、絶望に満ちたものであるべきだ。 "彼"は、そう考えた。 "彼"は、そう信じた。 そして『アイ』は、それに従う。 "彼"の相棒として、"彼"の願いを忠実に叶える。 殺す、確実に。 摘み取る、絶対に。 後悔させる、必ず。 自分達という悪に背いたこと、連合の未来を阻んだこと。 死柄木弔という魔王が目指す未来を遮る、箱舟なんて思想を唱えたことを悔やませて絶望の中で踏み躙る。 それは信心の狂気。皮肉にも、"革命"などとはかけ離れた圧政の虐殺命令だった。 「だからまずはあなたに死んでほしいなって。摩美々ちゃんとはそのあとゆっくりお話するからさ」 そう言って笑う『アイ』に、メロウリンクは幾つもの記憶を過ぎらせた。 それは彼女達と――箱舟という優しい思想に命をかけた、アイドル達と過ごした時間。 彼女達は、生きていた。 こんな地獄みたいな世界で、それでも懸命に足掻いていた。 そして、輝いていた。彼女達は無力だったが、しかしちゃんとアイドルだった。 田中摩美々。七草にちか。櫻木真乃。幽谷霧子。 そして。 そして。 『…手を。握ってもらっても……いいですか』 ――――――――そして。 「そうか」 対ATライフルを握る手が、静かに軋んだ。 メロウリンクは激情家ではない。 声を荒げることなど稀だし、この状況でも彼の心は荒ぶってはいなかった。 彼の中にある感情はごく静かで、そしてごく端的だった。 踏み躙るのだという、彼女達の生き様を。 絶望で染め上げるのだという、彼女達の笑顔を。 よく分かった。 理解出来た。 この女と、これを遣わした元凶が何を望んでいるのか。 そしてその上で。 メロウリンク・アリティは――決める。 そんなことは、させない。 その意思を口にするべく、喉を動かし。 敵手の喉を穿つべく、引き金に指を載せ。 メロウリンクが一世一代の鉄火場に臨もうとした、まさにその時だ。 『アイ』とメロウリンク、二人の会話に割り込む――か細い声が響いたのは。 「……なんですか、それ」 よろり、と立ち上がるシルエットがひとつ。 そこに、偶像と傭兵の眼差しが向く。 一つは興味。一つは驚きと焦り。 二者三種の感情を浴びながらも、少女は『アイ』だけを見ていた。 「それの、そんなのの……」 少女の名前は、田中摩美々。 メロウリンク・アリティの現マスターであり。 今は亡き若蜘蛛(モリアーティ)の忘れ形見でもある少女。 「――どこが、アイドルだっていうんですか」 そして。 偶像(アイドル)。 「そんなことのために、そんな気持ちのために……」 折れた片腕を、抱えながら。 ぜえぜえと荒い息を吐き、ただ立っているだけでもふらついてしまう有様なのに。 それでも、しっかりと――はっきりと。 絶望を運ぶために遣わされた後輩(アイドル)を見据えて、言った。 「……あの子の歌を、うたわないで……!」 ◆◆ 押し寄せたのは、地を嘗め尽くすような炎の濁流だった。 それは波だ。地上のすべてを押し流す、死が凝集したような洪水だ。 継ぎ接ぎ面で笑いながらこれを繰り出す男が、サーヴァントとも人間とも異なるある種使い魔のような存在であることはすぐに分かった。 その上で驚く。驚くしかない。たかが使い魔の身で、これほどの出力を繰り出せる存在がよりにもよって"あちら"の手に渡っていることに。 「おいおい」 既に火力だけを見れば、対軍宝具の域に達して余りある。 間違いなく規格外だ。少なくとも、単なる小手調べの段階で繰り出されていい一撃ではない。 アシュレイ・ホライゾンは銀炎を撒きながら、地を蹴って建物を足場に跳躍した。 空中への逃走。それは確かに地の洪水――ならぬ"洪炎"から逃れることは確約してくれたが、しかし安全を意味はしない。 空にて微笑む白い影。引き裂くように笑うその男が、すべての希望を奪い去るのだ。 「天下分け目だぜ。もっと派手にかましてくれよ、じゃなきゃとんだ肩透かしだ」 ビルが崩れる。 土砂災害さながらに降り注いでくるコンクリートの波が、神秘をも蝕む毒で汚染されていることは既にアシュレイも承知していた。 東京タワーでの襲撃。そこで目の当たりにした、空前絶後の土地殺し。 個性"崩壊"――万物、万象、生きとし生けるもの、形あるものすべてを無に帰す憎悪と妄執の具現。 伝播の特性を得た崩壊は、文字通り一欠片でも掠めれば即座に致命傷へ繋がる。 アシュレイは故に、細心の注意を払いながら対応することを強いられた。 銀炎を帯状に伸ばして崩壊の砂を焼き、溶かして離脱する。 月乙女(アルテミス)の火は癒やしの炎。 半身を焦がされてもたちまち癒せる破格の治癒能力だが、それでも魔王の毒そのものを塗り潰せるかは怪しかった。 賭けるには分の悪すぎる勝負。何しろ失敗すれば死ぬのだから、易々と打って出られる筈もない。 「生憎と、そっち方面はからっきしでな……!」 噴き出した銀炎はそのまま迫る魔王・死柄木弔へと向かう。 確かに火力では彼の崩壊に及ぶべくもないが、宝具を用いた攻撃である以上まともに浴びて無傷で済むとも思えない。 そんなアシュレイの予想はしかし、最も悪い形で裏切られた。 「言い訳すんなよ。夢見せるのは得意なんだろ?」 『地獄への回数券』と龍脈の力による体質変化、その重ねがけ。 流石に不死身ではないだろうが、限りなくそれに近い存在に仕上がっていることは確実だった。 銀炎で焼かれた端から復元されていく皮膚が、肉がその証明だ。 そしてそれにアシュレイが歯噛みするのと同時、悲鳴をあげる摩天楼の中に轟いた無数の銃声が彼の耳と肉体を劈いた。 「ガ、ッ……!?」 「マスク外したヒーローなんてただの冴えない社会人さ。現実(トゥルーフォーム)なんてガキに見せちゃいけない」 四方を駆け回る鉄騎馬の人型を辛うじて視認できたが、その速度はもうアシュレイの目に追える次元ではない。 そんな超音速で縦横無尽に爆走する暴れ馬が、的確に狙いを定めた跳弾という無茶苦茶を押し付けてくるのだから悪夢と言う他なかった。 もしもアシュレイ・ホライゾンの星辰光が煌翼との同調による変化を辿っていなかったなら、彼は今頃既に再起不能だったに違いない。 削られたそばから全力で癒やしを回す、魔王の所業に倣うような無茶でアシュレイはどうにかこれに対抗。 続く鉄騎馬本体による轢殺走行を紙一重で躱しながら――騎手の胴に一閃、刻むことに成功した。 「……肝に銘じとくよ。でも的外れだ。俺を指してヒーロー呼ばわりだなんて、見る目ないにも程があるぞ魔王」 倒せたとは思っていない。 あれも恐らく、炎を操る継ぎ接ぎ男と同じ使い魔の類だろう。 こんな規模の戦いができる手駒が無数に揃っている事実に目眩を覚えるが、泣き言を言っている暇はなかった。 迫る死柄木、その腕をいなしながら剣を振るい、再生性能の高さに関わらず削り落とせるだけの致命傷を狙って切り込む。 「おいおい。お得意の対話は俺にはナシかよ? 寂しいね」 「おまえとの対話は、もうあの子が散々やってきた筈だ。 それで分かり合えなかったなら、是非もない。後は雌雄を決するしかないと思ったが、違ったか?」 「いいや、正解だ。お利口さんじゃないかサーヴァント。 まさしくその通り――この世には、どんなに言葉を交わしてぶつかり合っても分かり合えない人間ってのが一定数いるもんだ」 アシュレイ・ホライゾンは凡庸な英霊だが、剣の腕前においては抜きん出た練度を持つ。 文字通り命がけで教わった師の剣は、今も彼の魂に色褪せることなく刻まれている。 そんな彼の振るう剣術を、心得もない素人崩れが初見で凌ぐなど言うまでもなく至難だ。 しかし死柄木は、持ち前の獣じみた直感と強化された五感に物を言わせてそれを初回から成し遂げる。 峰津院大和との戦いで見せたのよりも、更に二段は身のこなしが鮮やかになっている――恐るべきは、その驚異的な吸収力と成長性。 そしてそこから繰り出される"崩壊"の手。 凶悪すぎる相性(シナジー)が、優しい炎を引き裂きながらアシュレイに迫っていく。 「悲しいことだが、否定はしない」 とはいえアシュレイも、ただで死にはしない。 東京タワーの一件で実際に"崩壊"の猛威と性質を見ていることが、少なからず功を奏していた。 バックステップで手のリーチから逃れつつ、銀炎の渦で死柄木を取り囲む。 如何に再生持ちとはいえ、四肢を崩せば自由は奪える。 狙ったのは焼損、要するに部位破壊だった。 その上で一歩踏み込み、斬首を狙ってアダマンタイトの一刀を振るう。 死柄木の性能は出鱈目だったが、アシュレイは更に上の不条理を既に知っている。 即死以外は無傷と同義、そんな狂った正論(りくつ)を振り翳してくる救世主に比べれば――目の前の魔王はまだまだ易しい。 「全てを破壊し、虚無の地平線を紡ぐ。 ……全く共感はできない思想だが、おまえがそうなるに至った経緯を知らない以上は頭ごなしに否定するつもりもないよ。 あわよくば手を取り合える余地を探りたかったが、それも無理だというのなら無理強いはしない」 「いいね。ちゃんと見てるじゃないか、現実」 手応えは、なかった。 空を切る感触に眉を顰める。 銀炎が内側から弾け、溢れ出したのは蒼炎だった。 赤よりなお熱い、狂気の炎。 咄嗟に銀炎を檻状に展開して軽減させなければ、最低でも半身は吹き飛ばされていただろうとアシュレイは理解する。 「上から目線で手を差し伸べて、それが突っ撥ねられりゃ存在心に留めてブッ殺す。 いいね、やっぱりお前は英雄(ヒーロー)向いてるよ」 しかし、休む暇はない。 相殺した端から迫る継ぎ接ぎの拳が、炎を帯びている。 そこから噴き出す赫灼の一撃は、先ほど既に見ていた。 舌打ちをしながら距離を取り、放たれた熱拳を辛うじて凌ぐ。 返しに放った銀炎の津波と、蒼炎の防波堤が真っ向から衝突すれば。 蒼と銀の熱が混ざり合い――赤い大爆発を引き起こして、大規模なクレーターを作り上げる。 「分かり合えなくていい、できないから。だから――英雄(ヒーロー)と敵(ヴィラン)だ」 「そりゃ、ずいぶんと寂しい話だけどな――!」 爆発を切り裂きながら襲いかかるのは、跳弾舞踏会(ピストルディスコ)……風のホーミーズの銃乱射。 本来なら相当な脅威だが、再生能力持ちのアシュレイにとっては辛うじて鬱陶しいの範疇に収められる攻撃だった。 多少の被弾は許容して無理やり前に進み、ロケット噴射の要領で炎を放出し高速機動で荼毘の死炎を切り抜ける。 煌赫墜翔とは流石に行かないが、それでも小技としては十分だ。 「おまえとの対面は、遠からずやってくるだろうと思ってたよ。 そしてその時、先頭に立っておまえを受け止めるのは俺であるべきだとも思ってた。 あの子に――摩美々に任せっきりで、俺はおまえという人間のことを直視したことがなかったからな」 「テロリストとの交渉にガキを使うなよ。学徒動員じゃねえんだから」 「勘違いしないでくれ、あれはあの子自身の意志だ。 ずいぶん手酷くやられたみたいだったけど、それでもあの子なりに前に進めたようだったよ。残念だったな、ちゃんと意味はあったわけだ」 「そうかい」 応酬が、繰り広げられていく。 死の腕を掻い潜り、銀閃でどれほど刻めるかの勝負。 さしもの死柄木も無傷とはいかなかったが、彼もまた水準に満たない負傷は実質無効化できる身分の人間だ。 損傷と喪失を度外視して振るわれる獣の戦闘スタイルは、場馴れしているアシュレイでさえ胆が冷えた。 "崩壊"が耳を掠めかけた時点で、攻撃行為を中断して耳朶を切り落とす。 掠っただけで死が確定する以上、こんな自傷じみたやり方も許容しなければならない。 なかなかどうして、精神の削られる戦いだった。 「……こうして実際に見て思ったよ。おまえは、多分俺達みたいな他人が語るべきじゃない悲しみを背負っているんだな」 「知った口を利くじゃないか。これから殺す相手に同情して、エモーションに浸るのが趣味か?」 「おまえの殺意を浴びてみて、確信した。おまえに対しては多分、どんな対話も施しも暴力になる」 踏み込んでの一撃は薄皮を裂くに留まる。 しかし狙いはそこじゃない。 刀身を伝った輝く銀炎を、死柄木の全身に燃え移らせることだ。 「おまえを救えるのは、きっと俺じゃない。そのことを申し訳なく思うよ」 「は」 炎に包まれながら、死柄木は笑った。 涙の雨(レイン)が癒やすのは、"彼女"に愛されている者だけだ。 魔王が月乙女に祝福されることは決してない。 そして、再生能力があるからと言って生きたまま全身を焼かれる激痛までもを無視できるわけでもない。 死柄木弔は人間だ。 肉体は超人でも、生物としては人間のそれから何も変わっていない。 彼を今苛んでいるのは、人間であれば決して耐えられない筈の苦悶。 であるにも関わらず――全身を銀炎で包まれながら、髪の毛を逆立たせながら、死柄木はただ笑っていた。 引き裂くように。そして、この地平線上に存在する生物全て、否定して踏み躙るように。 「それでいい。俺はこんなに"救われてる"」 突き出された腕を避ける。 それを悪手と気付いたのは、コンマ一秒後のことだった。 側頭部に炸裂する衝撃に脳が揺さぶられ、視界がぐらつく。 「ッ……!」 当たり前のように人間に殴られたことに疑問を抱く余地はなかった。 龍脈の力を取り込み、更にどうやら"それ以外"も喰らったらしい魔王の身体だ。 サーヴァントであることが彼を相手にする上で何か一つでも優位になると、そう考えるのは甘すぎる。 咄嗟に体勢を立て直そうとするアシュレイは当然、崩壊を真っ先に警戒するが。 死柄木にしてみればそのことを踏まえて、別な手札を切ればいいだけだ。 「微温い炎だ。フレイムヒーローの足元にも及ばない――『業火燎原』」 「ご……ッ、が……!?」 "荼毘"に集約されていく熱、熱、熱。 それは彼の指を通じ、旋風となってアシュレイを吹き飛ばした。 焼き焦がされて散っていく肉、しかし真に厄介なのは破壊力ではない。 敵を拘束した状態で吹き飛ばせるという、言うなればアシュレイの動きそのものをコントロールできる性質だ。 柱状に吹き上がった竜巻が、アシュレイを上空へと押し上げていく。 ――そしてその真上まで飛び上がったのは、炎燃やす偏執狂の写し身だ。 『赫灼熱拳(ジェットバーン)』 上から下へ、天から地へ。 アシュレイを焼き払う炎の柱が具現する。 癒やしの炎を持つことは、しかし不死であることを意味しない。 むしろ覚醒能力が封じられている現状、アシュレイは不死性において死柄木と同格かそれ以下と言ってもよかった。 そんな状態で受け止めるには、この炎はあまりにも凶悪すぎる"死"であり―― 「で、念には念をだ。お前が箱舟の頭なんだろ? だったら確実に殺さなくちゃなあ」 よしんば生き残ることが出来たとしても、その先は与えない。 死柄木が触れたのは、もはや骨組みだけになった高層建造物だった。 彼の手に触れるなり崩れ、死の滝と化すビルディング。 それに合わせる形で、風のホーミーズが――神の写し身が形を失い、純粋な風の塊と化し空中で炸裂する。 「俺の世界に境界線(おまえ)は要らないんだ。 俺の願いが叶ったその先は、光も闇もありゃしない……ただの白い混沌があるだけさ」 するとどうなるか。 ホーミーズ達でさえ、直撃すれば死柄木の崩壊を免れることはできないが……彼らが撒き散らす副次的な自然現象はその限りではない。 炸裂の余波で生じた暴風域に乗って、崩壊の毒素を含んだ瓦礫と粉塵の山がアシュレイに襲いかかるのだ。 まさしくそれは滅びの砂嵐。自ら考え学習し、そうして育っていく魔王の新技にして最悪の殺し技。 確実なる崩壊の魔の手が、箱舟の要アシュレイ・ホライゾンの死を確定的なものへと変えた。 「消えろよ。ご都合主義(ハッピーエンド)に用はない」 ……これが――魔王・死柄木弔。 先代(オール・フォー・ワン)が見出し、犯罪王(モリアーティ)が磨き上げ、連合(なかま)が育んだ正真の怪物。 社会の犠牲者という形にさえもはや囚われない、あるがままに望む未来を手繰り寄せる全能者。 彼の描く未来に、光も闇も、灰色だってありはしない。 あるのは"無"だ。全てが均され、滅び、消え去った虚無の地平線。 彼こそは箱舟の否定者。 優しい結末を求める誰も彼もがいずれ直面する、最強最悪の壁。 そしてその彼の手により、他でもないアシュレイ・ホライゾンが今滅んだ。 それが意味するところはひとつ、全ての優しさと輝きの完全敗北。 死の暴風が吹き抜けたその先に、希望らしいものは何一つとして存在の権利を保てない。 「……、……?」 その筈だった。 しかし微生物一匹生存できない死界の中で、佇む影が一つ。 胎動する光の波動。 煌めき始める可能性。 「……はは。おいおい、マジかよ」 刮目せよ――――可能性(イマジネーション)が始動する。 「言葉を借りるぞ、相棒。今の俺に必要なのは、きっとお馴染みのあの言葉だから」 命が消え果てるどころか、彼の身体には傷一つない。 あったのかもしれないが、それは既に月乙女の加護で復元されている。 生存の余地など絶無であった筈の暴風域の中で、極小の可能性を掴み取ってみせたこと。 それはまさに、超極上のイマジネーションが彼を助けた結果だった。 「まだだ。まだ、負けを認めちゃやれないな」 魔王をして驚きを禁じ得ない、冗談のような生存続行。 崩壊の運命(さだめ)を跳ね除けて歩み出た姿は、あいも変わらず戦闘狂のとは全く違う優しさに満ちていて。 けれど、どこか得体の知れない――単純な強さよりもずっと厄介な脅威を滲ませながら、アシュレイ・ホライゾンはそこにいた。 「さあ、ここからだ。来るがいい――明日の光は奪わせない」 「上等だよ、英雄(バケモノ)め――根絶やしにしてやるぜ」 魔王、英雄。 崩壊、共存。 鏖殺、生還。 地平、箱舟。 戦いは続く。 二人の激突と共に、残骸の街が消し飛んだ。 ◆◆ 「君さ、今の状況わかってる?」 『アイ』が口にしたのは、率直な疑問だった。 窮地に際して立ち上がった田中摩美々。 その行動は勇敢だが、それ以上に無謀でもある。 摩美々はアキレス腱なのだ、箱舟陣営の。 彼女を先に潰されてしまえば――メロウリンクの死もまた確定し、まだ辛うじて命を繋いでいる七草にちかの命運も自動的に尽きてしまう。 だからこそ、摩美々が選ぶべきだった答えは沈黙。 『アイ』が命じられた嗜虐に、その余分に甘えて生を繋ぐことだった。 少し考えれば分かりそうなものだが――しかし彼女は、声をあげた。 そのことが解せず、『アイ』は思わず小首を傾げてしまう。 「アイドルがどうとか関係ないでしょ。そんなことより、今は自分のサーヴァントを心配してあげたら?」 メロウリンクの有様は、なかなかに凄惨だ。 致命傷こそ避けているものの、逆に言えばそれだけ。 命に関わらないというだけで、手傷としては相当な深手に達している。 それなのに今この状況で、まさかアイドル談義なんて持ちかけてくるとは思わなかった。 『アイ』は口元に指を当て、その迂闊と薄情を指摘する。 しかし摩美々は揺らぐことなく、毅然と言い放った。 「……そんな言葉が出てくるのは、アイドルじゃないです。 あなたが本当にアイドルだったら……あなたが本物の『星野アイ』さんだったら、そんな言葉は出てこない筈」 「分かるんだ。まあそりゃそうだよね、本物のアイがこんなにめちゃくちゃできるわけないし」 「そうじゃ、なくて……」 星野アイと『アイ』は似て非なる存在だ。 片や人間。片やその残骸を元に生み出された強化コピー。 サーヴァントをすら正面から叩き伏せる戦闘能力と、声を使った無限大の応用。 こんな真似ができる存在をアイドルとは呼ばないと言われたなら返す言葉もなかったが、彼女が言いたいのはそういうことではなく。 「関係なくなんか、ないんです。私達にとっては」 それよりももっと前の段階の話。 『アイ』の在り方の問題について、だった。 「アイドルって言ったって、いろんな子がいる。 明るい子、クールな子、ちょっとおバカな子、大人のお姉さんみたいな人。 でも、みんな……輝くために。きらきら輝いて、自分を、誰かを……照らすために、歌ってる」 櫻木真乃は、皆に元気を与えて。 幽谷霧子は、皆の心を照らして。 七草にちかは、生きるために輝いた。 田中摩美々(じぶん)も――そして、星野アイもきっとそうだった筈。 アイドルは何かを照らすために歌って、踊る。 そういう生き物だ。 界聖杯を肯定するわけではないが、"可能性の器を集める"というコンセプトにも合っているとそう思える。 ステージの上、そこに立つアイドル達。 そこには無限の可能性が広がっていて、だからこそ誰も彼もみんな尊いのだと摩美々は思っている。 あの世界で、そしてこの世界で、その両方で見てきた優しくて愛おしいヒカリのステージ。 「そんな、何の感慨もなく……誰かを壊すためにじゃ、ない」 けれど『アイ』には、それがない。 敵連合が送り出した新人アイドルにあるのは、ある種作業的な無機質さだ。 彼女にとって声とは道具で、歌とは武器だ。 死柄木弔によって生み出された、箱舟を殺すためのアイドル。 偶像の血から生まれ落ちた、悪魔のような超新星(ホーミーズ)。 彼女の歌に情熱はなく、歌うことや踊ること、何に対しても一つだってこだわりはない。 歌えと言われたから、歌う。 覚えろと言われたから、覚える。 やれと言われたから――ステージに立つ。 「真乃は……あなたが歌ったその歌をうたってた子は、とっても楽しそうに演るんです。 見てる人が、思わずくすっと笑顔になってしまうような。 落ち込んでいる人が、もうちょっと頑張ってみようかなって、元気になれるような」 「……、……」 「あなたのとは、ぜんぜん違う。もっと、ずっと……あの子は、すごかった」 「うん、よくわかんないや」 ごめんね、と笑って『アイ』は肩を竦めた。 何やら熱心に語ってくれているので耳を傾けてみたが、結局何が言いたいのやらさっぱり分からない。 たぶん摩美々ちゃんにしてみればそれがまず駄目なんだろうなあと思いつつも、『アイ』は一歩前へと踏み出す。 「私はアイドルだよ。そう作られた、連合製の、あなた達のためだけの偶像(アイドル)」 これ以上、わけの分からないアイドル論議に付き合ってやる義理も理由もない。 よって『アイ』は、此処で田中摩美々を摘み取ることを決めた。 その前言撤回は不合理。彼女の『プロデューサー』の意向に背く行為。 それを自ら選んでいること、それに意味を感じることもなく。 「イルミネーションスターズ。"人の手で輝かす光"って意味なんでしょ? だったら誰かに求められて歌って輝く私は、その名前に相応しいと思わない?」 メロウリンクの銃弾が飛んでくる――片手で払う。 二度目はコツを掴んだ。もう、流血すらせずに払えてしまう。 くるりと身を翻して軽く"声"を浴びせてやれば、ごろごろと地面を転がりながら鈍い音を立てる。 傭兵は傭兵。戦闘者ではなく、ステージの上で輝く歌姫に勝る光を放つこともない。 その確信を持ちながら、『アイ』は摩美々の方を向いてすう、と息を吸い込み。そして―― 「……じゃあ」 全てを決める、最後の歌声を吐き出そうとして。 「あなたを、推してくれる……そんな人は、いるんですか」 その言葉に、ふと。 何故だか、喉が止まった。 「あなたは……っ」 『アイ』はアイドルだ。 しかし、田中摩美々が言うようなアイドルではない。 必要だから歌い、殺すためにパフォーマンスする。 与えられた武器が歌声だったからそれに頼るだけで、これが銃でも金棒でも何も変わらない。 まさしく偶像のホーミーズ。 偶像という型を忠実にこなし続ける、そんな存在。 だが。 だが、元を辿れば、その身体に流れている血は―― 「あなたは、誰かの【推しの子】ですか?」 ――現代最高峰のトップアイドルのものだ。 →
https://w.atwiki.jp/magicman/pages/37652.html
偽霊接続 ハチャ・ラスト・ミストゥリアン SR (自然/光/闇) (9) 12000 クリーチャー:ディスペクター/キング・コマンド・ドラゴン/エイリアン EXライフ(このクリーチャーを出す時、自分の山札の上から1枚目をシールド化する。このクリーチャーが離れる時、かわりにそのシールドを墓地に置く) このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、相手のクリーチャーを1体破壊する。その後、そのクリーチャーとコストが同じクリーチャーを、自分のマナゾーンから2枚を残してバトルゾーンに出してもよい。 T・ブレイカー このクリーチャーがバトルゾーンを離れた時、自分の山札の上から5枚を墓地に置く。その後、「G・ストライク」付き呪文を好きな枚数コストを支払わずに墓地から唱え、「G・ストライク」付きクリーチャーを好きな数コストを支払わずに召喚してもよい。 作者:グレイトフル軍曹
https://w.atwiki.jp/indexorichara/pages/2427.html
…研究者の人生とは積み木の様な物だとボクは考える。 例えばそこに積み木が散乱していて、そこに時間が存在するならば。 特に拘りが無いのであればそれを積み上げる事は可笑しい話ではない。 子供染みた遊びではあるが積み木を組み立てる作業は中々どうして奥も深い。 限られたパーツのみで想像力を現実へと出力する遊戯。三次元パズル。 そしてその遊戯の果てに待っている物こそ至上の悦びである。 作品を壊す事、それも完成品ではなく製作の途中で耐え切れずに崩れる様。 「ボクが悦びを感じるのは、作品が折れる瞬間。耐え切れずに崩壊する様を見る事だ」 ボクはそれを楽しみに生きている。 無論、それだけが生き甲斐と言うほど寂しい人間ではない。 趣味もあれば多少親しい人間も存在する、至って普通の人間…の様な何か。 それでもボクは周囲の人間からすれば異常者に映るのだろう。 それについてボクは否定しない。確かにボクの破壊願望は普通ではないのかもしれない。 いや、自分で言うのは可笑しい話かもしれないがボクは唯、幼いだけなのだ。 子供ならではの残虐性。好奇心。その発露。 ボクの異常性は其処にある。その一部だけが幼いまま、ボクは大人になった。 だからボクは何時でも探している。ボクを愉しませる作品を、素材を。 「壊れない作品、ボクを永遠に愉しませてくれる―――そんな玩具を」 ――――――――――――――――――――――――――――――― 「ところでこの車、何処へ向かってるんです?」 「私用に付き合わせて申し訳ないけど、ボクの知り合いの所だ」 そんなボクは今、人気の少ない田舎道の上で車を走らせていた。 助手席に部下の研究員である『阿須佳 番(あずか ばん)』を載せてだ。 ボクの職業は研究者であるが、その仕事は研究室に引きこもり実験を続けるだけではない。 足で情報や発想の源、そして素材をかき集めるのも仕事の一つなのだ。 最も学園都市に所属している研究者の多く、それもマッドサイエンティストと呼ばれる類の存在の場合 研究に掛ける思いは仕事と言うより生き甲斐と言った方がしっくり来る物であるのだけど。 そして現在進行形で情報収集中のボク。その現在地は学園都市…では無く、その外の街である。 研究の資料と現地調査の為にボクは学園都市の外部へと出張しに来ていた。 通常、学園都市の内外を行き来する事は出来ないが特殊な審査を受けた人物や、一部の研究者は外へ出ることも許される。 その例が今現在のボク達である。最も、外に出る際に発信機機能を持った名のデバイスを注入されている為、監視下である事は変わらない。 「知り合いですか…。人臣さんの知り合いって想像つかないです?」 今、彼が呼んだ「人臣」というのはボクの名前だ。 フルネームは『人臣 上利(ひとおみ あがり』と言う。 学園都市で学者をやっているボクだが、今現在は研究と研究の間に出来た空白期間中で暇なご身分だ。 その期間を利用して学園都市の外へ向かう仕事を選んだ訳だ。 さっきはあんな事を言ったが、実際に研究をしている間は引きこもり同然になるのが恒例である。 要するにこうして足を使って仕事をする機会と言うのは今みたいな空白の期間しか訪れないのである。 そう考えると次の研究の発想を得ることも出来るかも知れないし、気分転換にもなる。 そういうプラスな結果を齎す可能性のある仕事は楽しめる物がある。 ま、研究に没頭するのもいいが休息も重要と言う事で一つ。 「君は時折失礼な事を言うな、番。ボクが知り合いの一つもいない寂しい人間に見えるのかい?」 「そんな事は…。でもどんな人か気になりますし」 どんな人か…。彼は変人ではあるが、ボク達の様に日陰の世界に生きている訳では無い善人だ。 研究者特有の価値観が可笑しい点は否めないが、行き過ぎる前に道徳観が勝る人物である。 そんな彼だが、何故ボクの様な人間と接点があるかと言えば、彼の人並みはずれた情報収集能力に起因する。 彼は触れてはならない学園都市の闇へとニアピンしてしまったのだ。 「へぇ…そりゃあ命知らずと言うか…。でもそれと人臣さんが何の関係が?」 「別に。見てしまった物は仕方ないし、彼には利用価値がありそうだったから助けたんだ」 誤解されがちだがボクは「人が狂う」様を見るのが好きで、生き甲斐にしている…だけではない。 もちろんその欲求は一番にあるけれど、それが全てという訳ではない。 利害を無視して助けてあげるほどお人好しではないが、利があるのに見殺しにする程冷酷でもないつもりだ。 だからこそ、助けた。故に今この縁が繋がっているのだとすればそれも悪くは無いと思える。 「利用価値、というとその情報収集力って奴ですか?」 縁と言うかコネと言うか、その為に人を助けるのは不純といわれるかも知れないがね。 結局の所、恩を売っておけば言う事を聞かせるのは簡単だし、手間の掛かる事でもなかったからだ。 そして目論見通り彼は大いに役に立つ人物だったし、期待以上の情報を売ってくれた。 今回も情報を買いに行く用事を取り付けて、外部出張のついでに尋ねた訳だ。 「さて、着いた。君も一緒に来るかい?」 「ええ、是非に。気になりますし」 ―――――――――――――――――――――――――――――― 「ああ、人臣さん。お待ちしてましたよ」 「――――――――――――――」 そこで待っていたのは目的の人物と、それともう一人。 見覚えの無い少女―――違うな。この子は見た目通りの年齢じゃなさそうだ。 少女と呼ぶには少しばかり埒外な雰囲気を纏う彼女は、風貌からして人目を惹く。 白とも灰とも言えない色の抜けた髪の毛は、それでも未だ少女の様な艶やかさを持っている。 猫を連想させるその眼は何処か虚ろな様に見えて確かな魂を感じる不思議な瞳。 まるで中学生にも見違える小柄な体を不釣合いに大きい椅子に収めて、佇んでいる。 「すいません、客人が来ている所でして」 「いや、構わないよ。急ぐわけでもないし」 椅子から立ち上がりこちらへ頭を下げる彼は、やはり何時もの如く礼儀正しい。 黒縁の四角い眼鏡をかけて短く乱雑に切られた茶髪は今時の大学生といった風貌か。 …そう言えばまだ名前を紹介していなかったかな。 彼の名前は「手繰 見掛(たぐり みかけ)」と言う。確か歳は20歳だった筈だ。 普段は学園都市の外でこうして情報屋を営んでいる一般人で、偶に学園都市を仕事で訪れたりしているそうだ。 そして仕事で学園都市を訪れたその時に運悪く命の危機に陥っていた彼を、偶々助けたのがボクと言う事だ。 それ以来、彼には仕事を頼む事も多く関わる機会もそれなりにあったが…彼はちっとも変化が無いな。 いつもの様に表情は柔和で、更には口元に微笑を湛えた彼。 しかしいつもと同じでないのは、隣に見覚えの無い人間を連れている所だな。 彼の事だ。またお節介で助けた相手かもしれないし、もしくはボクの様な客かもしれない。 とは言え別にこれ以上詮索する必要は無いし、時間を掛けてはいけない理由も無い。 「では、用が済んだら呼んでくれ。ボクは応接間で待っているからさ」 「はい。ではまた後で。ではヨツバさん、お話をお聞きします」 そんな会話を背に受けながら部屋を後にする。 少しだけ気になって、ドアを閉める寸前に振り返ると… 「-――――――クスッ」 少しだけ目が合った。その、ヨツバと呼ばれた女と。 ほんの一瞬の視線の交差だったが何となく彼女の事が分かった気がした。 いや、分かったと言うより分からされたと言うべきか。やはり彼女は何か別の理の人間なのだろう。 ―――後で、お時間がありますか? ―――構わない。 そんな視線だけの会話を交わして今度こそドアを閉める。 応接間は二つほど隣の部屋だ。既に其方へ向かっている番の背を追うように私はその場を去った。 ―――――――――――――――――――――――――― 「何というか、変な人でしたね。あ、男の人のほうじゃなくて女の子の方です」 「確かに。…あれは普通の人間じゃないな」 男の方も十分変人だがね、という言葉を飲み込んで素直な言葉を返す。 存在の埒外さで言えば二人揃って似た様な物なのは事実だが、言葉にしたところで意味は無いだろう。 再び先ほどの彼女を思い出す。風貌も雰囲気も人外のそれを思わせる彼女。 彼女が何者かは知らないが、後で話があるとか何とか。 学園都市の関係者では無さそうだが、はてさて…。 「それはそうと、彼に何を聞きに来たんです?」 「まだ次にする研究も固まっていないからね…。何かアイデアの基になる情報でも、と訪れただけさ」 要するに雑談と殆ど変わらない、そんな用事だ。 まぁ元も子もない事を言えば外部出張の期限はまだあるし、外を満喫したいだけでもある。 研究者と言うのが全て引きこもりの様な奴かと言えばそうではない。 少なくともボクは外出するのも好きだし、そもそも趣味が車を改造したり、その車でドライブに出かける事な程だ。 この愛車「グラントゥーリズモS」にも様々な改造を施してある。 今やこの車は垂直な壁を走る程度の馬力を誇るモンスターマシンと化している。 「そういえば意外な趣味ですよね、ドライブなんて」 「車は言う事を聞いてくれるからね。打てば響く、素晴らしいことだろう?」 普段実験対象としている子供は、直ぐに泣いたり駄々を捏ねたりと扱い難い事この上ない。 それに比べて車は楽で良い。言う事を聞くし、理論通りに性能を上げてくれる。 「言いたい事は分かりますけどねぇ。子供たちだって可愛いじゃないですか」 「可愛いと言いつつ実験台にしている君の方が余程残酷だろう…」 変に愛着が湧いた時点で、実験に支障が出る。 しかしその点、この助手は実験の際に不手際を起こすような事はしない。 子ども達を可愛いといいつつ被験者に冷酷になれる…・ いや、冷酷なのではなく普通通りと言うべきか。どれだけ愛着が湧こうと被験者は被験者。 そちらの方が余りに異常だろう。 「あ、人臣さん。お待たせしました」 「いや、構わない。早速話を聞かせてもらえるかい?」 応接間を訪ねて来た彼を迎えると、彼は淀みなくボクの前へ腰を下ろした。 彼はボクへと近付く事に躊躇をしない珍しい人種でもある。 ボクの見た目や雰囲気が人好きのしない、あるいは敬遠される類の不気味さを持っている事は自覚している。 そんなボクに躊躇せずに近付いてくる人物は少なく、彼や隣の番を除けば殆ど居ない。 「とはいえ、今回は唯の孤児院の情報ですからね。そこまでの派手さは無いですよ?」 「構わない。そもそも研究と言うのは地味さが殆どを占める物だからね」 事実だ。そもそも研究で派手さがあるのなんて最初と最期くらいだ。 それ以外は地味な物の積み重ね。それこそ積み木の様な物だ。 「なら早速。こちらの孤児院や、ここの施設なんかが子どもの数が多くて手が足りないとの話です」 「なるほど。確かにこの人員と施設でこの数の子どもを受け入れるのはきつかろうな」 こういう施設の人間は総じて善人である物だが、それで故に利害が一致しやすい。 此方の目的は彼らが処理しきれない黒い部分を掠め取るのと良く似ているからだ。 子どもの数が多過ぎて世話を仕切れないという裏事情を、ボク達が受け持つ。 その実態は学園都市へと引き取られ、人体実験の被検体とされる運命だが…。 「少々金を積めば子どもをこちらへ引き渡してくれるだろうな」 「まぁ、利害の一致ではあるでしょうから…。孤児院からすれば学園都市がわざわざ子どもを受け取ってくれる訳ですし」 そう、向こうからすればボク達が子どもを引き取るのは生徒とする為となっているのだ。 世話をし切れない子ども達を、有名な学園都市が引き取り世話をしてくれている。 そう相手が捉える限り、相手にとっては子どもを引き渡す事さえ『善行』と思うわけだ。 その末が実験用マウスである事など彼らは知らないのだし。 「ここと、あとこれですね。今回の情報はこんな所です」 「ご苦労。相変わらず良い腕をしているね」 これも本音だ。本来ならば期間などを考えてもそれほどの情報は集まらないと思っていたのだが…。 彼の集めてきた情報はボクの予想を大きく超えた量だった。 相変わらず卓越した情報収集能力だな…。 「ふむ……めぼしい被検体をリスト化しておいた。番、まとめておいてくれ」 「わ、早いですね。今もらった情報なのに…」 正直この時点でのデータなど眺めた所で大した情報にならないのは確かなのだが。 それでも候補となる孤児の健康状態くらいは確かめておく必要がある。 健康体である子どもをリストにまとめただけで大した事はしていない。 ――――――えと、吉永…弓削…紅ヶ咲…ここらへんは問題なしと。 たどたどしくも書類にチェックを通していく 「とりあえず今回依頼されていた情報は此処までですけど…」 「ああ、先ほどの彼女だけど…少し話をさせて欲しい」 ボクの言葉に彼は驚いたように眼鏡を掛け直した。 どうやらあちらさんもボクとの会話を望んだらしく、妙な一致に驚いたらしい。 「一目ぼれ、だなんてかわいい話ではなさそうですけど…」 「まぁ、少し気になることがあるだけさ。番、君はここでデータを纏めておきたまえ」 ええ!?と不満顔の番を置いて、ボクは応接間を出た。 背後からは「ヨツバさんなら、先ほどの部屋で待っていますので!」と言う彼の声が掛かった。 なるほど、先ほど彼を訪ねる為に訪れた部屋で彼女は待っているらしい。 「ヨツバ…と言ったか。ボクにわざわざ話を持ちかけてくるなんて…如何ほどの存在なのやら」 そんな独り言を零して、ボクは部屋のドアを開けたのだった。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 「―――――待っていたわ…。少し、お話をしてみたくて…」 目の前の少女は、いや少女では無かったのだったか。 改めて目の前の女は見た目の幼さとは裏腹に落ち着いた物腰で話を切り出した。 女が座っている席の前に、椅子を引きずっていって腰を下ろした。 ボクが話をする準備を整えたのを確認して、彼女も表情を改めたようだ。 「待たせたようで悪かった。それで、君は?」 「私はヨツバ…。世界中を旅している旅人ね…」 旅人、と来たか…。今時世界中を旅するなんて珍しいを飛び越えて愉快な御仁だ。 しかも見る限りその言葉に偽りは無さそうで、確かに彼女からは異国の香りがした。 先ほどまでの微笑を湛えた表情から一転して真剣な表情で自らを説明する彼女だが、 それにしても真剣な顔をしていて尚、大人には到底見えないな…。 「では、ヨツバ。君は何故ボクと話をしたいと?」 「ボク?何だか随分と可愛らしい人だわ…ふふふ」 折角真剣な表情を作っていたようだが、ボクの一人称を聞いて緊張が崩れてしまったらしい。 別に自分の呼び方くらいどうだって良いだろう…それに。 「質問に答えてくれるかい…。まぁ、褒め言葉だと受け取っておくが」 よりによって、かわいいとは…。 本当に変わった女だな…。ボクをかわいいと評する奴なんて…。 あ、番もその一人だったな。元々知り合いの少ないボクだし、その内の二人がかわいいとボクを評している。 もしかしたら案外、ボクは見た目的にはそう悪くないのかもしれない。 いや、そんな事は極めてどうでもいいが。 自分の見た目に気を使う事なんて殆ど無いしね。 「そうね…。要するに、貴女を見定めたかっただけなの…」 「見定める?ボクをかい?一体何の為に………っ」 見定めると言う言葉の意味を考えていると、不意に彼女が動いた。 ずいっと顔を近づけてくる女に面食らいながらも、負けじと彼女を見返す。 至近距離で目が合うと、改めて女の異常さが身に染みる。 先ほどまでは気づきもしなかったが、その猫の様な瞳はそもそもその色彩からして以上だった。 その瞳は非人間的な紅色に染まっていて、その瞳を見つめていると酷く不安定になりそうだ。 ボクは宗教に詳しくは無いのだが、そんなボクですら一つ連想できる物があった。 ―――まるで『悪魔』の瞳だと、神話に出てくる悪魔の瞳を女神が何らかの手違いで持ってしまったかのような違和感。 酷く整った顔立ちを凌駕する不安定さ。彼女の印象はそれだ。 「少し考えていることがあってね…。託す事の出来る人を探していたの」 「託す…。君の話は要領を得ないな…」 見定める、託す、と続けて意味不明なワードが乱発する。 こちらが彼女の話をうまく飲み込めていないのか、もしくはそもそも話を分からせる気が無いのか。 多分後者なのだろうが…。まぁ、良いけど。 と思えば再び彼女は突飛な事を言い出したのだ。 「いえ、そうね。貴女は今、行き詰っている事とかあるかしら…?」 「話が飛ぶな…。いや、確かに研究が行き詰っているといえばその通りなのだけど」 事実、ボクは次の研究が決まらずに居る訳だし、彼女の疑問にはイエスと返答すべきだ。 彼女はどう見ても科学に精通しているとは思えないし、ボクの研究に助言など望める訳が無いのも分かってはいるのだが… 「…そうだな。今、ボクは次の研究が見つかっていない状態だ」 「…そう。私は科学の心得は無いのだけど…私と会ったのなら。出逢ってしまったのなら、どうであれ進展があると思うわ」 一体何の根拠があってそんな事を言うのやらとも思ったが、彼女の言葉には妙な力がある。 なぜだがその言葉は本当の事になるのでは無いかと、そう信じれてしまうのだ。 「そう…。珈琲をどうぞ、ミルクはお好きに…」 「君も客じゃないか…調子が狂うな、全く…」 と思えば微笑みながら微笑ましい振る舞いをする。 ニコニコと目を細めている間は不安定さも薄れるのだが…妙な女だ。 文句を言いつつも珈琲を手に取った。 備え付けられたミルクを珈琲のカップへと垂らして、スプーンで掻き混ぜる。 そんな様子を何故だかにこやかに眺めていた彼女が気になる発言をしたのはその直後だった。 「珈琲に垂らしたミルクって、掻き混ぜなくても放置しておけば混ざるわよね…」 「それは…温度差や垂らした時の運動量があるからだろう。それにミルクと珈琲では比重も異なるだろうし」 意味の無い問答だが、応えない事にも意味が無いので素直に応じる。 そもそもこんな事は科学の心得うんぬんの前の話ではなかろうか? しかし彼女は此方のそんな思考など気にもしない様子で 「そうね…。なら、極めて同じモノがどちらも静止した状態で同じ場所にあるなら…それは独りでには混ざらないのね」 だなんだと言ってのける。そんなもの… 「極めて同じモノならそもそも混ざろうが混ざるまいが同じ場所にある時点で同化しているような物―――――待てよ?」 極めて同じモノ、しかし違う物。それは自然には混ざらない物で何かしらの干渉があって初めて融合する。 これを能力者に置き換えてみよう。能力と能力、似て異なる二つに外部から干渉を行うのならば… 「能力の―――融合?………そうか、それなら…」 未だ学園都市の誰もが為し得ない『多重能力』 それが不可能である根拠は「一人の脳に複数の能力を制御させるのは負担が大き過ぎる」という物だ。 ならば一つの能力を振るう事で複数の能力を振るうのと同じ結果を生み出せばいい。 つまりは『二つの結果を生み出す一つの能力』を生み出す。 「………試す価値はあるな」 「あら、何か思いついた…?私には科学は分からないけど…貴女は学園都市の科学者なのでしょう…?」 ボクの素性は彼にでも聞いたのだろうか? しかしそんな事はどうでも良い。この発想はすぐさま試してみる必要がある。 その発想を与えてくれた目の前の彼女には感謝しなくてはならない。 「ああ。申し訳ないがボクは失礼するよ。少し急用を思い出した」 「あら、では最期に貴女の名前を聞かせてくれないかしら…?」 席を立ったボクの背中に投げかけられた問いに、少しばかりの感謝を込めて応える。 ここで名乗った事実が、後のボクの運命を大きく変える事になるとは未だ知らずに。 「ボクは人臣上利という名前だ。また縁があれば会おう、旅人さん」 そう言って部屋を後にしたボクの背後で、彼女が口にしたセリフが何だったのか。 それをボクは一ヵ月後に知る事になる。 「人臣………あの方に預けましょう。『あの子』に幸運が訪れますように…」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 「番!今すぐ学園都市に…いや、その前に情報のあった孤児院へ向かってから戻る」 「えっ、ちょっ…まっ!待ってくださいよ~どうしたんですか、人臣さん!」 応接間へ早足で駆け込み、未だ書類と睨めっこしている番の腕を引く。 突然の事に驚いた様子の番だが、かまってはいられない。 気にせずに腕を引きつつ、彼の方へ目を向ける。 さすがに別れの挨拶くらいはしておくのが礼儀だろう。 今回限りの関係という訳でもないし、次の機会の為にも別れ際は大事にしなくては。 「世話になった。また次の機会もよろしく頼むよ」 「了解。また良い情報を集めておくよ。人臣さんはお得意様ですしね」 ―――――礼を言う。 そんな言葉を残してボク達は早足に車へと向かうのだった。 そういえば… あの不思議な女とはこれを最期に終ぞ会話を交わす事は無かったな、と今はしみじみと思いながら。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ―――――――一ヵ月後 「さて、粗方の準備は済んだ。番、被検体の用意は?」 「出来ています。しかし、予定より一人少ないですね。途中で他の所に持ってかれたみたい…」 ちっ、と舌打ちしたくなる気持ちを抑えて頭に手をやる。 一人なら誤差の範囲と言いたいがこれから行うのは長期、かつ繊細な実験だ。 初期の人数位はしっかり計画のまま進めたい。 「誰が奪われた?それと、代替品の準備は?」 「奪われたのは紅ヶ咲って子ですね。代わりの子についてなんですが、一つ心当たりが」 心当たり?と首を傾げると番はタブレットを取り出してボクの前へと差し出した。 その画面へと目をやると現在行き場をなくしている「置き去り」のリストが表示されていた。 その中に一つ、要閲覧のマークがついた名前があった。 「これは?――――名前を指定した紙を持たされていたって事?」 「はい。それもその指定された名前ってのが、教育者とかじゃなくて人臣さんの名前なんですよ」 ボクの名前が?ますますよく分からないが、様子を見てみるのもいいか。 もしかしたらこの子が代理として被験者になるかもしれないし、時間も手間もそう掛からない。 「分かった。すぐに向かおう。番、君は待機しておきたまえ」 「りょーかいです!それじゃあ気をつけて行ってらっしゃい!」 調子のいい奴だな…と思いながらも見送りを受ける。 待機と言えば堅い印象を受けるが、要するに休憩時間な訳だし嬉しいのは分かるけど。 それにしたって番はあまりにも科学者然としていない気がする。 ボクが気を遣うべきことではないけど、あれではこの先苦労するのでは無いだろうか。 「ボクがずっと面倒を見るなんて事にならなきゃいいけど…」 こういう嫌な予感は当たるんだよなぁ、と溜息を残して車に乗り込むのだった。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 「それで?ボクの名前が指定されていたと聞いたのだけど」 「ああ、お待ちしていました。そうなんですよ。此方としても扱いに困っていまして…」 学園都市の外周を囲む検問を管理している役人に事情を聞く。 どうにもその子どもを置いていったのは女だったようだが、誰もその顔を見ていないのだという。 しかしボクの名前が本当に指定されていたのだとすれば、罠の可能性もあると思ったが… 「もちろん、危険物などを持ち込んでいないかチェックしましたよ。異常無しです」 その懸念はひとまずは杞憂らしい。 ボクを恨んだ誰かがボクを狙い打ちにしたのでなければ、一体何のためだったのかと疑ったところで。 「…そういえば、あの女は託すと言っていた様な…」 一ヶ月前に会話を交わした妙な女。 その女にボクは名乗ったし、女は女で気なることを言っていた。 となればその子は彼女の関係者か? 「分かった。面会…と言うか、会わせてくれるかい?」 「了解です。では、お通り下さい」 役員に通されて部屋へと這入ると、そこでボクは出逢ったのだ。 これからのボクの運命を大きく変える事になる、その少女と。 「ああ、そういえばその子の名前なのですが… 役員が語るその子のプロフィールを聞きながら、ボクは目を奪われていた。 目の前に座って此方を視ているその幼子に。その瞳に。 ―――――四方 視歩と言うらしいです。 それがボクと視歩が出逢った、最初の刻だった。 ここを始点として切っても切れない縁が繋がってしまう事は、まだお互い分からないまま。
https://w.atwiki.jp/magicman/pages/19045.html
聖の愛(セイント・ラブ) ラスト・クリスマス VR 火 6 クリーチャー:メガ・コマンド/革命軍/ラブズ 8000 ■このクリーチャーがバトルゾーンに出たとき、相手の手札を一枚選ぶ。それがクリーチャーであれば、バトルゾーンに出す。そのあとそのクリーチャーとバトルする。(選んだカードがクリーチャーでなければ、破壊する。) ■このクリーチャーが破壊されるとき、自分の手札のコスト4以下のクリーチャーを一枚選んでコストを支払わずに召喚する。 ■W・ブレイカー 作者:6masu フレーバーテキスト 僕からのクリスマスプレゼント。君は覚えてる?そこに書いてあった「大好き」の文字。思い出すたびに涙が出るよ。それの返事が想像と違っても、君と出会えたことはよかったと思うよ。今年は泣かないで済むように、買い物に出も出かけるよ。だけどひとつ言わせて。 「大好き」 評価 相手の手札を見て選ぶのか見ないで選ぶのかが書いてありません。それと、「破壊」はバトルゾーンにあるクリーチャーを墓地に置く時の表現なので、(選んだカードがクリーチャーでなければ、捨てさせる)などの方が良いと思います。 -- minmin (2016-12-15 19 39 02) カード名とフレーバーがwham!の方を思い起こさせますね -- Orfevre (2016-12-15 20 48 46) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/lastbible3/pages/15.html
トップ|基礎知識|会話|合体|調教|攻略|マップ|魔獣|魔法|アイテム|その他 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (SFC-WorldMap.png) 【出典】 株式会社アトラス.「ワールドマップ」.『ラストバイブルⅢ 取扱説明書』.株式会社アトラス.1995,p.6-7 上へ
https://w.atwiki.jp/touhoukashi/pages/23.html
https://w.atwiki.jp/eramegaten/pages/623.html
概要 主な登場人物 プレイするには 概要 主な登場人物 プレイするには 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/fantasylaboratory/pages/267.html
2008.08.31 00 49 水上 える 「どうした、浮かない顔をしているな」 「ああ、僕は憂いているんだ……三題ネタのコーナーが終わってしまうことを」 「怯えているの間違いじゃないのか?行き所を失ったお前の妄想がどこへ向かうのか」 「ああ、どちらでも同じことさ!このコーナーは僕のロマンだったんだ!そう、例えるなら恋さ!」 「お前は恋の歌を紡ぐ吟遊詩人……とでも言いたいわけか」 「そんなたいそうなことを言うつもりじゃないけど」 「ふうん、どうだかな」 「でも、わからない。どうしてみんな書かないんだ?この衝動を、書く以外にどうしろというんだ!?」 「みんなひとりでますをかいているからさ」 「がーん。最悪のしもねたオチ。呪う!僕はこの運命を呪う!!!」 モモと そんな運命を書かないでー!!08/31 01 00 水上 える 人間とは所詮、最後はしもねたでおとす悲しい生き物なのよ……09/01 02 08